「24pで撮ると映画っぽい」「60pはなめらか」——ここまでは多くの解説が書いています。しかし現場で本当に困るのは、29.97という中途半端な数字はなぜあるのか、ドロップフレームとは何を落としているのか、混ぜて編集するとなぜカクつくのかという部分です。
この記事では、フレームレートを「演出」ではなく「規格」として整理します。ここを押さえておくと、納品トラブルが起きなくなります。
結論:fpsは演出ではなく「納品先」で決まる
フレームレート選びの順番はこうです。
- 納品先の規格を確認する(放送・配信・上映で変わる)
- その系統の中から演出に合うfpsを選ぶ
- スローが必要なカットだけ高フレームレートで撮る
逆順にやると、編集の最後で「このフレームレートでは納品できません」と言われて撮り直しになります。
主要フレームレートと用途
| fps | 系統 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 23.98 / 24 | シネマ | 映画、CM、ミュージックビデオ |
| 25 | PAL系 | 欧州・中国・豪州などの放送 |
| 29.97 / 30 | NTSC系 | 日本・北米の放送、Web動画 |
| 50 | PAL系 | 欧州のスポーツ中継 |
| 59.94 / 60 | NTSC系 | 日本のスポーツ中継、なめらかな動き |
| 100 / 120以上 | ハイスピード | スローモーション素材 |
NTSC系とPAL系をまたぐと変換が必要になり、必ず画質が犠牲になります。海外案件では最初に確認してください(NTSCとPAL/世界の地デジ放送方式)。
なぜ29.97fpsという半端な数字があるのか
もともと白黒テレビの時代、NTSCのフレームレートはちょうど30fpsでした。ところがカラー放送を始めるとき、色情報を運ぶ信号と音声信号が干渉してしまう問題が起きました。
そこで、フレームレートをわずかにずらして干渉を避ける方法が採られました。30 × 1000 ÷ 1001 = 29.97fps。これが今も残っています。60pが59.94、24pが23.98になるのも同じ理由です。
つまり29.97は「技術的な妥協の産物」であり、白黒テレビとの互換性を保つために生まれた数字です。デジタル化された現在も、放送のインフラ全体がこの数字の上に成り立っているため変えられません。
ドロップフレームは「映像を落とす」機能ではない
ここが最も誤解されている点です。ドロップフレームで落としているのはタイムコードの番号であって、映像のコマではありません。
29.97fpsなのにタイムコードを「30フレーム=1秒」で数えると、実際の時計より少しずつ進んでしまいます。そのずれは1時間で約3.6秒。放送では致命的です。
- ドロップフレーム(DF):一定の規則でフレーム番号を飛ばし、実時間と一致させる。放送の標準。区切りは「;」(セミコロン)で表記
- ノンドロップフレーム(NDF):番号を飛ばさない。実時間とずれるが、コマ数を正確に数えられる。区切りは「:」(コロン)
- 放送納品では尺が秒単位で厳密に決まるため、原則DF。Web納品なら気にしなくてよい場合が多い
編集ソフトで「なぜか尺が合わない」というときは、DFとNDFが混在していないか確認してください。
シャッタースピードとの関係(180度ルール)
動きの見え方を自然にする基本は、シャッタースピードをフレームレートの2倍にすることです。
| フレームレート | 基本のシャッタースピード | シャッター角度 |
|---|---|---|
| 24fps | 1/48秒 | 180° |
| 30fps | 1/60秒 | 180° |
| 60fps | 1/120秒 | 180° |
シャッターを速くするとカクカクした硬い動きに、遅くすると残像の多い柔らかい動きになります。演出として意図的に外すのはよいですが、まず基準を知ってから外してください。
ただし室内では、この基準が照明のフリッカーとぶつかることがあります。電源周波数に合わないシャッターを選ぶと横縞が出ます(LEDフリッカーとは/デューティー比)。
スローモーションの倍率は割り算で出る
スロー倍率 = 撮影フレームレート ÷ タイムラインのフレームレート
- 120fpsで撮影 → 24pのタイムライン = 5倍スロー
- 60fpsで撮影 → 30pのタイムライン = 2倍スロー
- 240fpsで撮影 → 30pのタイムライン = 8倍スロー
高フレームレートで撮るときの注意点は3つです。
- シャッターが速くなるぶん暗くなる。照明かISOで補う必要がある
- 画角がクロップされる機種がある。読み出し速度の制限による
- データ量が跳ね上がる。記録メディアの書き込み速度が足りないと録画が止まる
特に3つ目は見落とされがちです。必要な書き込み速度は「ビットレート ÷ 8」で計算できます。
フレームレートを混ぜるとなぜカクつくのか
30pのタイムラインに24p素材を置くと、編集ソフトはコマを水増しして辻褄を合わせます。このとき同じコマが2回続く箇所と1回だけの箇所が交互に現れ、規則的なガタつきとして見えます。
- 整数倍の関係(60p素材を30pタイムラインへ)なら比較的きれいに収まる
- 24pと30pのように割り切れない組み合わせは必ず破綻する
- 複数人で撮影するときは、撮影前にfpsを全員で統一する。これだけで編集の事故が激減する
撮影前チェックリスト
- 納品先の規格(NTSC系かPAL系か、fpsはいくつか)を確認したか
- タイムコードはDFかNDFか、指定はあるか
- シャッタースピードは180度基準か、意図して外しているか
- 室内なら電源周波数とシャッターが合っているか
- スローを使うカットの倍率から必要fpsを逆算したか
- そのfpsに耐える書き込み速度のメディアを用意したか
- 複数カメラのfpsは統一されているか
まとめ
フレームレートは見た目の好みではなく、放送規格の歴史と互換性の産物です。29.97もドロップフレームも、白黒からカラーへ移行した時代の判断が今も効いている結果にすぎません。
この背景を知っていれば、「なぜ30pではなく29.97なのか」「なぜ尺が合わないのか」で悩む時間がなくなります。まず納品先を確認する——それがすべての出発点です。
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