「1080iと1080p、どっちが高画質?」——検索でよく見る質問ですが、この問い自体が少しずれています。解像度はどちらも1920×1080で同じだからです。
違うのは1枚の画をどう送るかという走査方式です。そして日本の地上デジタル放送は、今もインターレースで届いています。この記事では、その理由と現場での扱い方を整理します。
結論:iとpの違いは「1枚を分けて送るかどうか」
| 比較項目 | インターレース(i) | プログレッシブ(p) |
|---|---|---|
| 送り方 | 1枚を奇数ラインと偶数ラインに分け、交互に送る | 1枚をそのまま上から順に送る |
| 1回に送る情報 | 半分(フィールド) | 全部(フレーム) |
| 必要な帯域 | 少ない | 多い |
| 動きの滑らかさ | 同じ帯域なら有利 | フレームレート次第 |
| 静止画の切り出し | ギザギザが出やすい | きれい |
インターレースは限られた電波帯域で、解像度と動きの滑らかさを両立させるための工夫でした。1枚を半分ずつ送れば、同じ帯域で送る回数を倍にできる——ブラウン管時代に生まれたこの発想が、今も放送に残っています。
「60i」と「30p」は何が同じで何が違うのか
ここが表記の混乱の元です。
- 60i:1秒間に60フィールド。2フィールドで1枚になるので、完全な画としては1秒に30枚
- 30p:1秒間に30フレーム。完全な画が1秒に30枚
- 60p:1秒間に60フレーム。60iの倍の情報量
つまり60iと30pは「1秒あたりの完全な画の数」が同じです。ただし60iは半分ずつ60回に分けて送るため、時間の刻みは細かい。だから動きは60iのほうが滑らかに見えます。
「60iは60fpsだから60pと同じ」という誤解が非常に多いですが、情報量は半分です。一方で「60iは30pと完全に同じ」というのも不正確で、動きの表現は60iのほうが細かい——この中間が正解です。
フレームレートそのものの考え方は、NTSC系とPAL系の違いとあわせて理解すると整理しやすくなります(NTSCとPAL)。
日本の地デジは今もインターレース
ハイビジョン放送はプログレッシブに移行したと思われがちですが、日本の地上デジタル放送のハイビジョンは1080iが標準です。しかも解像度にも注意点があります。
- 地上デジタル放送:多くが水平方向を圧縮した1440×1080iで送出されている。受信側で1920×1080に引き伸ばして表示される
- BS・CSデジタル:1920×1080i が使われている
- 帯域の制約が理由。限られた電波で多チャンネルを送るための判断
「地デジはフルHDではない」と言われるのはこのためです。放送方式の全体像は世界の地デジ放送方式で解説しています。
インターレース特有のトラブル
コーミング(櫛状のギザギザ)
2つのフィールドにはわずかな時間差があります。被写体が速く動くと、その差が横線の食い違いとして現れます。これがコーミングノイズです。
- 動きの速いスポーツ、パン、走る被写体で顕著
- 静止画として切り出すと必ず見える。サムネイル作成で気づくことが多い
- ブラウン管では目立たなかったが、液晶などの固定画素ディスプレイでははっきり見える
Web配信ではそのまま使えない
PCやスマートフォンの画面はプログレッシブ表示しかできません。インターレース素材をそのままアップすると、動きのある場面で横縞が出ます。
対処はデインターレース(インターレース解除)です。処理方式によって仕上がりが変わります。
| 方式 | 考え方 | 結果 |
|---|---|---|
| 2つのフィールドを合成 | そのまま重ねる | 静止部はきれいだが動く部分に櫛が残る |
| 片方のフィールドを引き伸ばす | 半分を捨てる | 櫛は消えるが解像感が落ちる |
| 動き適応処理 | 動いている部分だけ処理を変える | 最も自然。処理は重い |
フィールドオーダーの取り違え
奇数ラインと偶数ラインのどちらを先に表示するかという設定です。ここを取り違えると、映像が細かく前後に震えるような不自然な動きになります。
「なんとなくガタつく」「動きが気持ち悪い」という症状が出たら、編集ソフトのシーケンス設定でフィールドオーダーを確認してください。
今、どちらで撮るべきか
| 納品先 | 推奨 | 理由 |
|---|---|---|
| Web・SNS・配信 | プログレッシブ | 視聴環境がすべてプログレッシブ表示 |
| 企業VP・イベント上映 | プログレッシブ | 再生機器を選ばない |
| テレビ放送 | 局の指定に従う | 多くの案件で1080iが指定される |
| アーカイブ・資料用 | プログレッシブ | 将来の扱いやすさ |
迷ったらプログレッシブです。インターレースを選ぶのは、放送局への納品規格として指定されたときだけ、と考えて構いません。
そして最も避けるべきは混在です。1つのタイムラインにiとpの素材を混ぜると、どちらかが必ず劣化します。撮影前に統一してください。
チェックリスト
- 納品先はインターレースを要求しているか
- 複数カメラで走査方式は統一されているか
- 編集シーケンスの設定は素材と一致しているか
- フィールドオーダーは正しいか
- Web用に書き出すとき、デインターレースをかけたか
- サムネイル用の静止画に櫛が出ていないか
まとめ
1080iと1080pは優劣ではなく、生まれた目的が違うだけです。インターレースは限られた帯域を有効に使うための発明であり、電波で送るという制約がある限り合理的な選択でした。
一方で、視聴環境がほぼすべてプログレッシブになった現在、放送以外でインターレースを選ぶ理由はありません。この線引きさえできていれば、走査方式で悩むことはなくなります。
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