今回は写真撮影で重要な「測光」について、基礎から実践的な活用方法まで詳しく解説していきます。
目次
測光の基礎知識:光を理解する3つの指標
写真撮影において「光」を理解することは極めて重要です。しかし、光を表す用語には様々なものがあり、初学者にとってはとっつきにくい分野かもしれません。ここでは、主要な3つの測光用語について詳しく解説していきます。
1. 光度(cd:カンデラ)とは
光度は、光源から特定の方向に放射される光の強さを表す基本的な単位です。単位記号は「cd」で、カンデラ(candela)と呼びます。
具体的には:
- 1カンデラは、約1本の蝋燭の明るさに相当
- 光源自体が持つ明るさを示す指標
- スピードライトやLEDライトのスペック表記でよく使用される
実践的な活用例
- ストロボやLEDライトの選定時の比較指標として
- 多灯撮影時の光量バランス設計に活用
- スタジオ照明のセッティング時の参考値として
2. 照度(lx:ルクス)について
照度は、ある面に当たる光の明るさを表す単位です。単位記号は「lx」で、ルクス(lux)と呼びます。
主な特徴:
- 光が当たる面の明るさを示す
- 距離によって値が変化する
- 撮影現場での光量測定に最も一般的に使用
実際の数値例
- 晴れた日の屋外:100,000lx程度
- 曇り日の屋外:10,000lx程度
- 一般的なオフィス:500-1,000lx
- 住宅の居間:200-500lx
3. 輝度(nt:ニト)の重要性
輝度は、ある面から出てくる光の明るさを表す単位です。単位記号は「nt」で、ニト(nit)と呼びます。
特徴と重要性:
- 反射や発光する面の明るさを示す
- ディスプレイや反射材の性能評価に使用
- HDR撮影時の露出設定の参考になる
測光記号の定義と実践での活用
主要な測光記号一覧
E(照度):
- 単位:lx(ルクス)
- 計算式:E = Φ/S(Φ:光束、S:面積)
I(光度):
- 単位:cd(カンデラ)
- 計算式:I = Φ/ω(ω:立体角)
L(輝度):
- 単位:nt(ニト)
- 計算式:L = I/S(S:見かけの面積)
実践での活用方法
1. スタジオ撮影での活用
スタジオ撮影では、これらの測光値を理解することで以下のような活用が可能です:
- メインライトの設定
- 被写体までの距離と必要な照度を計算
- 光度から適切なストロボ出力を決定
- バックライトの調整
- 背景の輝度を考慮した露出設定
- キーライトとの光量比の決定
2. ロケーション撮影での応用
屋外やロケーション撮影では:
- 自然光の測定
- 時間帯による照度変化の把握
- 補助光の必要性の判断
- レフ板の効果的な使用
- 反射率と距離から得られる照度を予測
- 主光源との明るさバランスの調整
測光器の種類と使い方
1. 入射光式測光器
- 特徴:
- 被写体に当たる光の照度を直接測定
- 環境光の総量を正確に把握可能
- 使用シーン:
- スタジオ撮影
- ポートレート撮影
- 商品撮影
2. 反射光式測光器
- 特徴:
- 被写体からの反射光を測定
- カメラ内蔵の測光システムもこの方式
- 使用シーン:
- 風景写真
- スポーツ撮影
- 建築写真
まとめ:測光知識の実践的活用法
1. 撮影前の準備
- 撮影環境の光の特性を理解
- 必要な機材の選定と配置
- 測光値の予測と計画
2. 撮影中の活用
- リアルタイムでの光量調整
- 露出補正の判断
- 多灯撮影時のバランス調整
3. 後処理での応用
- RAW現像時の適切な露出補正
- HDR合成時の露出値の決定
- 印刷用データの調整
測光の知識は、技術的な理解だけでなく、創造的な表現の幅を広げるためにも重要です。基本的な用語と原理を理解し、実践で活用することで、より確実な撮影が可能になります。
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