Log撮影とLUTの基礎|なぜ眠い映像で撮るのか、8bitでLogを避けるべき理由

Log撮影とLUTの基礎|なぜ眠い映像で撮るのか、8bitでLogを避けるべき理由

Logで撮った素材をそのまま再生すると、コントラストの低い眠たい映像が出てきます。「これで合っているのか不安になる」というのが、多くの人がLog撮影でつまずく最初の壁です。

結論から言えばそれで合っています。ただし、Logで撮ることが常に正解とは限りません。この記事ではLogとLUTの役割を切り分けたうえで、「Logで撮るべきでない場合」まで含めて整理します。

目次

結論:Logは「記録形式」、LUTは「変換表」

LogLUT
正体対数的なトーンカーブ色の入出力対応表(ルックアップテーブル)
役割広い明暗差を効率よく記録する記録した信号を見られる絵に変換する
使う場面撮影時の記録設定撮影時のモニタリング/編集時の変換

この2つは別物です。「LUTを当てる」=「色を作る」ではありません。まずはLogから戻すための変換があり、その後に見た目を作る工程が来ます。

Log = 記録の「入れ方」、LUT = 表示に戻す「対応表」同じ 0〜100% の信号値に、より広い明暗差を詰め込むためのカーブが Log です100%50%0%0714記録される信号値シーンの明暗差(ストップ)Rec.709LogRec.709 は 6〜7 ストップで頭打ち。それより明るい部分は記録されませんLog で記録低コントラストLUT(変換表)表示・納品仕上がりの絵Logは「撮影時の記録設定」LUTは「表示と編集で当てる変換」※LUTを当てても記録データは変わらない
Logは同じ0〜100%の信号値により広い明暗差を詰め込むためのカーブ。LUTはそれを表示用・納品用に戻すための対応表

なぜ眠い絵で記録するのか

センサーが捉えられる明暗の幅は、記録できるビット数よりずっと広くなっています。この幅をそのまま直線的に割り当てると、暗部に使える段数が足りず、明部は早々に白飛びします。

人間の目は明るさの変化を対数的に感じ取ります。そこで記録側も対数カーブを使い、暗部に多くの段数を、明部に少ない段数を割り当てることで、限られたビット数で広いダイナミックレンジを収めます。これがLogの発想です。

低コントラストに見えるのは、ハイライトからシャドウまでを全部データとして抱えている証拠であって、劣化ではありません。RAWとの違いについてはRAWとJPEGDNGファイルとは?もあわせて読むと位置づけが掴めます。

見落とされがちな「ガンマと色域はセット」

各社のLogはトーンカーブ(ガンマ)と色域(ガモット)の2つで構成されています。カメラのメニューでも「Logの種類」と「色域の種類」が別々に選べるようになっているのはこのためです。

編集時にLUTを当てても色が合わない場合、ガンマは合っているのに色域の指定を間違えているケースが大半です。LUTのファイル名には対応する組み合わせが書かれているので、撮影時のメニュー設定を必ずメモに残してください。

LUTの2種類を混同しない

変換LUT(テクニカルLUT)

Logで記録した信号を、標準的な表示規格(Rec.709など)に戻すためのものです。「正しい位置に戻す」だけで、作品性はありません。メーカーが公式に配布しているものを使うのが基本です。

ルックLUT(クリエイティブLUT)

見た目を作るためのものです。フィルム調、シネマティックなど。変換LUTを当てた後に重ねるのが正しい順序で、Log素材にいきなりルックLUTを当てると破綻します。

1D LUTと3D LUT

  • 1D LUT:RGB各チャンネルの明るさだけを変換する。色相は動かせない
  • 3D LUT:色の組み合わせごとに変換先を持つ。色相・彩度まで動かせる。.cube形式が事実上の標準

現場では「モニタリングLUT」を当てる

撮影中に眠い絵を見続けると、露出も色も判断できません。外部モニターにLUTを読み込ませれば、記録はLogのまま、表示だけ仕上がりに近い絵で確認できます。

  • あくまで表示だけ。記録データには焼き込まれない(焼き込む設定がある機種は誤操作に注意)
  • クライアント確認用のモニターにも当てておくと、「なんだかぼんやりした映像ですね」という不要な指摘を防げる
  • 波形モニターはLUT適用前の信号で見る。LUT後の波形で露出を判断すると外す

Logの露出は「見た目」で決めない

Logには規格ごとに中間グレーが来るべき基準値が定められています。ここを外すと、暗く撮ればノイズが浮き、明るく撮ればハイライトが復元できません。

  • メーカーが公開している基準値を確認し、グレーカードで合わせる
  • やや明るめに振ってノイズを避ける運用もあるが、ハイライトの余裕を削ることになる。素材の性格で判断する
  • 「モニターで良く見えたから」で決めない。波形で数値を見る

【重要】Logで撮るべきでない場合

状況理由
8bit記録しかできない階調が足りず、グラデーションにバンディング(縞状の段差)が出る。特に空や壁で顕著
短納期・撮って出しグレーディング工程を挟む時間がない
複数人で撮影する設定と仕上げの基準を揃えられないと、カット間で色がバラつく
ライブ配信リアルタイムで変換する仕組みがなければ眠い絵がそのまま流れる

特に1つ目は重要です。「Logで撮れる」ことと「Logで撮って破綻しない」ことは別です。10bit以上で記録できるかを確認し、8bitしか選べないなら、素直に標準のガンマで正しく撮ったほうが良い結果になります。

ビット深度とコーデックの関係はMP4ファイルとは?、記録に必要なメディア速度は容量計算とあわせて確認してください。

納品先のカラースペースを先に確認する

規格主な用途
Rec.709HDテレビ放送、Web動画。最も一般的な納品先
DCI-P3デジタルシネマ上映
Rec.2020UHD/HDR

グレーディングの前に「どの規格で納品するか」を確定させてください。ここが決まらないまま色を作ると、後から全部やり直しになります。編集ソフト側でカラースペース変換を明示的に扱う(変換ノードやACESを使う)と、途中で納品先が変わっても対応しやすくなります。

作業環境の前提

グレーディングはモニターが信頼できることが前提の作業です。色が正しく出ない画面で色を作っても、他の環境では別物になります。

  • キャリブレーション対応のモニターを使う
  • 作業部屋の照明を一定に保つ(窓からの光で判断が変わる)
  • ノートPCの内蔵ディスプレイだけで仕上げない

色温度そのものの考え方は色温度とミレッド値の関係性で解説しています。

まとめ:撮影前チェックリスト

  • 10bit以上で記録できるか(8bitならLogを見送る)
  • Logの種類と色域の組み合わせをメモしたか
  • 中間グレーの基準値を確認したか
  • モニタリング用の変換LUTを用意したか
  • 納品先のカラースペースは確定しているか
  • グレーディングする時間が工程に入っているか

関連記事:MP4ファイルとは?DNGファイルとは?RAWとJPEGラスターとベクター画像

参考資料・一次情報

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