「V90と書いてあるカードを買ったのに録画が途中で止まる」「読み取り最大170MB/sと書いてあるのに書き込みが追いつかない」——記録メディアのトラブルは、規格表記の読み方を知らないまま買うことで起きます。
この記事では、自分のカメラの記録設定から必要なカードのスペックを逆算する方法を、SD・CFexpress・外付けSSDの3系統に分けて整理します。
結論:必要な速度は「ビットレート ÷ 8」で出る
カメラの記録ビットレートはMbps(メガビット毎秒)、カードの書き込み速度はMB/s(メガバイト毎秒)で表記されます。1バイト=8ビットなので、ビットレートを8で割れば必要な書き込み速度が出ます。
| 記録モード(目安) | ビットレート | 必要な持続書き込み | 推奨規格 |
|---|---|---|---|
| 4K 30p 8bit Long GOP | 約100Mbps | 12.5MB/s | V30 |
| 4K 60p 10bit 4:2:2 Long GOP | 約200Mbps | 25MB/s | V30〜V60 |
| 4K 60p 10bit 4:2:2 All-Intra | 約400Mbps | 50MB/s | V60以上 |
| 4K 120p / 6K RAW | 約800Mbps〜 | 100MB/s〜 | CFexpress |
ただしこの数字ぴったりのカードを買ってはいけません。実測値は公称を下回りますし、使い込むほど速度は落ち、発熱でも低下します。算出値の1.5〜2倍を目安に余裕を持たせてください。コーデックとビットレートの関係はMP4ファイルとは?で解説しています。
SDカードの表記の読み方
SDカードには複数の規格が同時に印字されているため、どれを見ればいいのか分かりにくくなっています。動画で見るべき順に並べます。
1. ビデオスピードクラス(V30 / V60 / V90)←最重要
数字がそのまま「最低保証される持続書き込み速度(MB/s)」です。V60なら60MB/s以上を維持できます。動画撮影で唯一信頼できるのがこの表記です。
2. バス速度(UHS-I / UHS-II)
- UHS-I:理論上限104MB/s。端子は1列
- UHS-II:理論上限312MB/s。端子が2列ある
- UHS-IIカードをUHS-I対応機に挿しても動作はするが、速度はUHS-I止まり。カメラ側の対応を先に確認する
UHS-Iの上限が104MB/sである以上、UHS-IカードにV90は物理的に載りません。V90が必要ならUHS-II一択です。
3. 容量規格(SDHC / SDXC / SDUC)
SDHCは32GBまで、SDXCは2TBまで、SDUCはそれ以上。古い機材ほど上限が低いので、中古カメラを使う場合は必ず取扱説明書で対応容量を確認してください。
4. 見なくていい表記
- 「読み取り最大○○MB/s」:パッケージで最も大きく書かれていますが、録画に使うのは書き込み側です。ここを見て選ぶのが最も多い失敗です
- A1 / A2(アプリケーションクラス):スマホでアプリを動かすためのランダムアクセス性能。動画撮影では重要度が低い
- Class10 / U3:それぞれ10MB/s・30MB/s保証という古い指標。Vクラスがあればそちらを見る
CFexpressは3タイプあり、互換性がない
| タイプ | インターフェース | 理論上限 | 形状の特徴 |
|---|---|---|---|
| Type A | PCIe Gen3 x1 | 約1,000MB/s | 最も小さい |
| Type B | PCIe Gen3 x2 | 約2,000MB/s | XQDと同じ形状 |
| Type C | PCIe Gen3 x4 | 約4,000MB/s | 最も大きい |
この3つは物理的に形状が違い、相互に挿さりません。「CFexpress対応」とだけ書かれた情報を鵜呑みにせず、自分のカメラがどのタイプかを必ず確認してください。
Type BはXQDと同形状のため、XQD対応機がファームウェア更新でCFexpress Type Bに対応した例があります。ただし逆は成立せず、CFexpress Type B機でXQDが使えるとは限りません。
外付けSSD収録で見落とされがちな点
カメラのUSB-C端子や外部レコーダーにポータブルSSDを直結する運用が増えました。カード比で容量単価が安く、収録後にそのまま編集機へ繋げるのが利点です。ただし注意点があります。
- 発熱によるサーマルスロットリング:長回しで速度が落ちて記録が止まる。金属筺体や放熱ケースを選ぶ
- ケーブルの規格:USB 3.2 Gen2対応でないケーブルを使うと速度が出ない。充電専用ケーブルは論外
- メーカーの動作確認リスト:カメラ側が対応SSDを公開している場合が多い。まずそこを見る
- 電源供給:SSDの消費電力ぶんカメラのバッテリー消費が増える
必要容量の計算式
必要容量(GB)= ビットレート(Mbps)÷ 8 ÷ 1000 × 記録秒数
200Mbpsで1時間収録するなら、200 ÷ 8 ÷ 1000 × 3600 = 約90GB。丸一日のイベント収録で実働4時間なら360GB、予備を含めて512GB以上を用意する、という組み立てになります。RAW収録の場合はさらに桁が変わるので、DNGファイルとは?やRAWとJPEGもあわせて確認してください。
現場で効く5つの実務ルール
- デュアルスロットは「同時記録」に設定する:リレー記録は容量を稼ぐ設定で、バックアップにはならない
- 大容量1枚より中容量を複数枚:1枚が飛んだときの被害を分散できる
- フォーマットは必ずカメラ本体で:PCでのフォーマットは記録が止まる原因になる
- 正規流通で買う:容量やスペックを偽装した粗悪品が一定数出回っている
- カードリーダーもボトルネックになる:UHS-IIやCFexpressの速度は、対応リーダーがなければ活きない
記録メディアは消耗品として予算に入れる
フラッシュメモリには書き換え回数の限界があります。業務で毎週回しているカードを何年も使い続けるのは、機材トラブルを自分で仕込んでいるのと同じです。
そして中古のカメラを検討する際は、本体価格より先に「そのカメラが使うメディアが今も買えるか」を調べてください。専用メディアの機種は、本体が安くてもメディアとリーダーで総額が逆転することがあります。
まとめ
カード選びは感覚ではなく計算で決まります。ビットレートを8で割り、1.5〜2倍の余裕を持たせ、Vクラスで確認する。この3手順を踏めば、パッケージの「最大○○MB/s」に惑わされることはなくなります。
関連記事:MP4ファイルとは?/DNGファイルとは?/RAWとJPEG/HEIFフォーマット

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