「HDMIで繋いだら映らない」「12G-SDIのケーブルを買ったのに4K60pが通らない」——SDIまわりのトラブルは、規格の世代とケーブルの限界を混同していることが原因の大半です。
部品メーカーの技術資料は回路設計者向けで、現場で必要な情報とは違います。この記事では撮影・中継の現場で判断に使える形でSDIを整理します。
結論:SDIは「1本で何を通せるか」で世代が分かれている
| 規格 | 伝送レート | ケーブル1本で通せる映像の目安 |
|---|---|---|
| SD-SDI | 270Mbps | SD(標準画質) |
| HD-SDI | 1.485Gbps | 1080i / 720p |
| 3G-SDI | 2.970Gbps | 1080p(60pまで) |
| 6G-SDI | 6Gbps | 4K 30pまで |
| 12G-SDI | 12Gbps | 4K 60p |
| 24G-SDI | 24Gbps | 8K / 4K高フレームレート |
数字はそのまま伝送できるデータ量です。解像度・フレームレート・ビット深度・色情報の量をすべて掛け合わせた合計が、この帯域に収まるかどうかで判断します。
なぜ放送現場はHDMIではなくSDIを使うのか
| 項目 | SDI | HDMI |
|---|---|---|
| コネクタ | BNC(回して固定できる) | 差し込むだけ。抜けやすい |
| 伝送距離 | 長い。同軸ケーブルで数十〜100m級 | 短い。4Kでは3〜5m程度。延長にはアクティブケーブルや光変換が必要 |
| ケーブル | 75Ω同軸。現場での引き回しに強い | 細く断線しやすい |
| 著作権保護 | なし。機材間で素直に通る | HDCPで映らないことがある |
| 普及範囲 | 業務・放送機材 | 民生機・PC・モニター |
現場でSDIが選ばれる理由は画質ではなく、「抜けない」「遠くまで届く」「余計な認証で止まらない」という運用上の信頼性です。本番中にケーブルが抜けて映像が飛ぶ事故を、コネクタの構造そのもので防いでいます。
見落としがちな4つの落とし穴
1. 高速になるほどケーブルは短くなる
最も重要な点です。同じケーブルでも、HD-SDIなら余裕で届く距離が、12G-SDIではまったく届きません。周波数が上がるほど信号は減衰しやすくなるためです。
- ケーブルには対応する規格と距離が明記されている。必ず確認する
- 「4K対応」とだけ書かれたケーブルは、6Gまでか12Gまでかを確認する
- 長距離が必要なら、光ファイバー変換を検討する
2. 機材側の対応世代を揃える
カメラが12G-SDI出力でも、受け側のスイッチャーやモニターが3G-SDIまでならそこで頭打ちになります。系統の中で最も遅い機材が全体の上限を決めます。
3. クワッドリンク(4本束ね)という過渡期の方式
12G-SDIが普及する前は、3G-SDIを4本使って4Kを送る方式が使われていました。既存機材にはこの方式しか対応していないものがあります。
- ケーブルが4本必要で、取り回しと管理が煩雑
- 4本の順序を間違えると映像が破綻する
- 画面を4分割して送る方式と、フレームごとに分ける方式があり、送受で揃っていないと映らない
4. 音声はSDIにもHDMIにも乗る。違いはチャンネル数
SDIは映像だけでなく音声・タイムコード・付随データを同じ1本に多重化して運べます。これをエンベデッドオーディオと呼び、HD-SDIでは最大16チャンネル、SD-SDIでは8チャンネルを埋め込めます。
ここは誤解されやすい点ですが、HDMIも音声を伝送します。「SDIだから音を一緒に送れる」わけではありません。違いはチャンネル数と、それが可能にする運用にあります。
- HDMI:一般的な機器で最大8チャンネル程度。民生用途や2ch収録なら十分
- SDI:最大16チャンネル。多言語音声、出演者ごとのマルチトラック、素材音と完パケ音の同時伝送に対応できる
音が出ない・別チャンネルに入っているというトラブルは、この多重化された音声の割り当てを確認すると解決することが多いです。音声の接続まわりはXLRケーブルとマイクの接続方法も参考にしてください。
必要な帯域はどう見積もるか
SDIは非圧縮で映像を送ります。つまり必要な帯域は計算で出ます。
おおよその帯域 = 横 × 縦 × フレームレート × ビット深度 × 色情報の係数
- 解像度を4倍(HD→4K)にすれば、必要な帯域も約4倍になる
- フレームレートを倍(30p→60p)にすれば、帯域も倍
- 10bitは8bitより約1.25倍、4:4:4は4:2:2より約1.33倍
「4K 60p 10bit 4:2:2」が12G-SDIでちょうど収まる規模だと覚えておくと、机上で判断できます。
現場でのトラブル切り分け
| 症状 | 疑うべき箇所 |
|---|---|
| まったく映らない | 受け側の対応世代。ケーブルの断線。BNCの締め忘れ |
| ノイズが走る・ときどき途切れる | ケーブル長が限界を超えている。品質不足 |
| 解像度やfpsを上げると映らない | 帯域不足。系統内のどれかが古い世代 |
| 4Kだけ映らない | クワッドリンクの方式不一致、または結線順 |
| 映像は出るが音が出ない | SDIに多重化された音声チャンネルの割り当て |
切り分けの基本は「一段ずつ落とす」ことです。4K60pが映らないなら4K30pを試し、それも駄目なら1080pに落とす。どこで映るかが分かれば、帯域の問題か機材の問題かが特定できます。
導入時のチェックリスト
- 送出側・受け側の両方が同じSDI世代に対応しているか
- 必要な距離を、その規格でケーブルが保証しているか
- 長距離なら光変換やリピーターを予算に入れたか
- 4K運用ならシングルリンクかクワッドリンクか統一されているか
- 音声の埋め込みチャンネルの割り当てを確認したか
- 予備ケーブルを本数分持っているか(断線は必ず起きる)
まとめ
SDIの世代は「1本のケーブルで何Gbps流せるか」という一点で分かれています。そして現場で問題になるのは規格そのものより、ケーブルの限界距離と、系統内で最も古い機材です。
HDMIとの使い分けも画質の話ではありません。抜けない、遠くまで届く、認証で止まらない——業務用の現場が求めるのはその信頼性です。
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